思い出すのは同じ晴れ。

小さい時に銭湯で溺れた時から、私の水嫌いは始まっていた。
温泉、プール、温冷に関わらず水が怖いと感じるようになった。
幼稚園のプールの時間。みんなキャーキャー言いながらシャワーを浴びる。ビーチボールを投げ合っている。とりあえずずる休みをしよう。

小学校に上がると、更に深いブールになった。せいぜい10mが限界だった。みんな魚のように泳いでいる。なぜ私には出来ない。
気付けば社会人になったが、相変わらず泳ぎ方は分からない。幸い海のない県に住んでいて、水場に行く機会も殆どない。

しかし、不思議なことに海は嫌いではない。もちろん泳ぐ訳ではないが、視界に広がるのが海であれば、心は止まることを知らず一目散にそこへと駆けて行く。
平和な世の空の下で見る、その曇りのない青さが、優しく深く包んでくれる。以前旅先で偶然行き着いた場所に美しい砂浜があって、その時は日常の憂鬱も何もかも忘れてはしゃいでいた。残念ながら一人での旅行だったため、今すぐにでも伝えたい気持ちを届ける人はいなかった。
海を見ると、遠いいつかの記憶が蘇るような気になる。とても優しい笑顔で、私に言葉をくれる人。どんなに明日が不確かなものでも、一緒にいれば愛されている気がする。
夢の中でもまだ近付けない、縮まらない微妙な距離。姿も声も知らない誰かに、今ではないずっと前に会った人と、再び抱き合える日を望んでやまない。